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リビングとオーディオの関係:第3回「デザイナー・カフェオーナー水井さんの場合」(前編)
特集 2020年2月18日

リビングとオーディオの関係:第3回「デザイナー・カフェオーナー水井さんの場合」(前編)

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水井七奈子さん:プロフィール
東京都生まれ、長野県在住。日本女子大学家政学部住居学科卒業後、横浜国立大学大学院を卒業し一級建築士として、古民家再生の第一人者である降旗設計事務所に勤務。主に修復する古民家の構造調査にかかわる。結婚後、ご主人のご家族が経営する食品加工会社「寿高原食品株式会社」の商品のパッケージやラベルのデザインを担当。2016年4月に上田市に同社の自社製品のアンテナショップとして「CAFÉ LITTLE MATILDA」を開店。デザイナーとカフェオーナー、一男一女のママとして忙しい日々を送る。
WEB:http://r.goope.jp/matilda


【今回のサマリー】

・日本女子大家政学部住居学科の実践第一の授業の楽しさから直感力の大事さを学ぶ
・建築士からデザイナーへ転身された理由
・日常の生活に必要な安心感に非日常を感じるアクセントを大事にする
・音楽のある生活の中で、安心を感じられるBGMとライブは日常と非日常の関係


【 水井さんのキャリアと建築についての思いを伺いました】

ー日本女子大の家政学部住居学科ってなんだか、すごく面白い学科の名前ですけど、具体的にはどんなことを学ぶ学科なんでしょうか?

住居専門の、住居に特化した建築をやるって学科なんですけど、家政学部なのに建築課と同じように単位が取れるんです。女性建築家でここ出身の先輩がおおくいらっしゃいました。

ーおもいっきり理系なんですね?

そうなんです。1年から教養課程とかすごく少なくて専門的な学科が多くありました。鉄の破断実験とかコンクリートつくって壊したり、とにかく実験実習が多くて大学はいってすぐに自分がやりたかったことができるのが楽しくて、1日も学校を休みたくない面白い学科でした。フィールドワークもあって、たとえば家の中の台所にあるものの数を数えて、収納がどれだけ必要か調査したりとか、離島にある建物にある台所スペースの使われ方を調べ、他の地域と比較して、どんな違いがあるのかをレポートしたり。

ーそれは楽しいな〜。

力学の授業もおもしろくて、まず自分で工作物をつくって荷重をかけて、どこだと壊れるか、どのぐらいの荷重で壊れたかを学生同士で競わせるんですよね。それで壊れたあとに壊れないようにするために、どう計算していくかってことを教わるんです。ここで植え付けられたのは、直感的にこれは壊れる、これは大丈夫だろう、って判断できる感覚を身につけることと、そしてそれが建築には大事だということでした。

ー実践主義ですね。すばらしい!スタイリッシュなデザインをするにしても、その裏側には、建築家としてこれは壊れないって直感が働かないといけないと。

そうです。やはり女子大の家政学部ってことだから、純粋な理系として、数学や物理が得意な人ばかりが来るわけじゃないので、実験、実習を通して、まず感覚的に解らせるということを大事にしていて、私も、そこをしっかりと鍛えられたと思います。だから、この大学で学んだことが自分にとっても、すごく大きかったと思います。

ー女性って、ものづくり好きな方が多いですよね。お料理もそうだけど手芸だったり、ちょっとした工作だったり、あと最近はDIY系女子とかも増えてますね。

そもそも女性は子供も生み出してますからね、ゼロから(笑) 誤解を恐れずにいえば、私もそうでしたが住居は、多くの場合、女性が居る時間が長い場所だと思いますから、女性のほうが設計士として合うのではという思いはあります。造作は力仕事で、男性のほうが向いてる感じもありますけど、子供を生むということ同様にゼロから1にするところで、設計は女性が得意なコトなのかな、という実感はありますね。

ー建築とかものづくりにおいて、設計というと工学的で数学が前にたってきてしまうけれど、デザインってワードに置き換えると、女性がアプローチしやすくなるし、女性の感覚に近づく気がしますね

わかります!だから自分も、今はデザインに移っちゃってるんですよね(笑)。もともとデザインが好きな方が建築設計とかに多いはずだし、逆に数字が好きですって人は、すくない印象がありますね。

ー大学を卒業されたあと、横浜大学大学院ではどんなことを学ばれたんですか?

歴史建築物のなかの日本建築史、建築芸術を専攻しました。おもに古い日本建築の建物を調査して図面を新たに起こしたりしました。過去に作られたものがどういう構造になっていて、どういう作り方をしていたのかを知るのが楽しかったんですよね。

ーなるほど、そこから古民家再生の設計事務所への流れにつながるんですね。

そうですね、降旗設計では再生する古民家の調査をして見えないところも想像しながら図面をおこし、その古民家をリノベーションする設計士の方をサポートして、実施設計の図面を書く仕事が主でした。

【今のお仕事についてお聞きしました】

ー今のお仕事はデザイナーだとおもうんですけど、なにがきっかけで変わられたんですか?

2人目の子供ができて、それまでは建築の仕事と子育てを両立していたのですが、さすがに2人の小さな子供を育てながら仕事するのは、周りに迷惑をかけてしまうと感じたので退職しました。その後、子供たちが育って保育園に預けられるようになって、時間ができて仕事をしたいって思った時に、子育てしながら自分のキャリアを生かしてできるのは、デザインの仕事でした。

ーなるほど。やはり子育てが一つのきっかけなんですね。

そうです。ちょっと話はさかのぼりますけど、結婚した主人の実家が経営する会社がジャムやジュースを作ってたんですけど、実は私はジャムが苦手だったんです(笑)だけど、主人の会社のジャムを食べたらすごく美味しくて、結婚して初めてジャムを好きになったんです。だけど、主人の会社は殆どがOEM生産で卸売りしていて、自社製品とか、ほんのわずかしか売ってなかったんです。こんな美味しいジャムやジュースなんだから、ぜひ自社製品として売りたいという思いを強く持ちはじめて、売る場所も含めて自分になんとかできないかなーって、子育てしながら考えていたので、保育園に子供をあずけられるようになって、手が空いたので、まずは自社製品のラベルやパッケージのデザインから始めました(下:水井さんがデザインされたジャムのラベル)

ーその後カフェをオープンされました。

はい。子育てしながら常に感じてたのが、都会だと子供づれのお母さんが、ちょっと立ち寄れるカフェとか色々あるのに、地元の上田には、それが見当たらなかったんです。そこで、自社製品を売りたいという思いと合わさって、自社製品を販売するアンテナショップ兼カフェが作れたらいいな、という思いが自分のなかに生まれてきました。
そして、やるならば私個人の仕事ではなくて、あくまで主人の会社の事業として、地域への社会貢献として、街の人が楽しい、役に立つと感じる場所を提供することに意味があると考えました。地域の人に楽しんで貰える場所であることが第一で、そのうえで自社の製品を知ってもらえればいい。このことを主人や社長にプレゼンしたら快諾してもらえて、いろんな補助を行政から受けられたり、協力していただける方もいて、一気にカフェが形になりました!(下:CAFE LITTLE MATILDA)

ー当然、カフェのデザイン、内装の設計はご自身でやられたんですよね?

そうですね。正確な実施設計の図面は工務店さんにお願いしましたけど、基本設計とかデザインスケッチは自分でやりました。あとは、予算管理も。部材とかも、もっと安くしてとか、この工事は、もうすこし簡略化してとか工務店さんに、逐次お願いしてました(笑)

ー素敵なカフェですよね。しかも、奥に子供づれのお母さんが、自由に子供を遊ばせながらお茶できるスペースまであるのがすごいです。

最初に、お店の場所を見た時に、すごく広くて直感的に、奥にクローズドなスペースを作ろうって思いました。奥のスペースは、店舗全体の1/4、表のスペースの1/3ぐらいの広さがあります。靴をぬいで上がれるスペースとして、親子でゆっくりできる場所にしたので、おかげさまで貸し切りで使われるお母さんたちもいらっしゃいます。(以下:CAFE LITTLE MATILDAのキッズスペース)

ー僕もなんども伺ってますが、子供の声とか気になったこと全く無いですよね、気づかないというか。

そうなんです、実際、いままでクレームになったこと一度もないんです。音を完全に遮音しなくても、走り回ったりしている姿が見えないだけで、意外に気にならないものなんです。たぶん目から入った動きから騒音として感じちゃったりするからなんだと思います。これは自分が経験的に感じていたことで、目からの情報を少なくして、音をある程度おさえれば大丈夫なんです。

ーなるほど。目から意識させられるってわかります。店内のBGMの音量とかも、そうですよね。BGMなしで静かだと、なんか落ち着かなかったり。

ありますねー。お店でもそこは気にかけているところです。やっぱり場所と、それにあった音ってありますし。

ーそういえば、カフェでライブ演奏とかもやられてましたよね?

はい。お店のある海野町商店街のイベントで、ジャズライブをやっていて、そもそも私自身がジャズが好きだったので、うちのお店で毎月やっていただけないかと、お願いに行きました。そうしたら快諾いただけて、月一回で始まり、その後ライブ出演者の輪が広がって、今は毎月3組の方に演奏していただいてます。

自分の考え方として、生演奏であるライブにまさる音楽はないなーって思ってるんです。でも日常的にその情報量が流れると、やっぱり疲れちゃうので、ライブはあくまで非日常として考えてます。
同じように、お店のBGM用のオーディオセットを置くときには、まず日常的にインテリアとして調和する、視覚的に目立たなけれど、ちょっと個性のあるデザインを選びます。
そして、そのデザインから出る音が想像できるという印象も大事にしたいです。この店ならば、ちょっとレトロな角の丸いものがいいなとおもってて、こちらの真空管アンプ(SW-T10)とか暖かくて柔らかいデザインの印象があるので、いいなーって思いました。

ー日常的に存在しても違和感のないもの、特別感がうすいことが大事なんですね。

そうですね、非日常ならば前述したライブがいいし、たまにやることが非日常の価値だとおもいます(後編に続く)

取材場所協力:石森良三商店 

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