リビングとオーディオの関係:第4回「デザイナー・カフェオーナー水井さんの場合」(後編)

水井七奈子さん:プロフィール 東京都生まれ、長野県在住。日本女子大学家政学部住居学科卒業後、横浜国立大学大学院を卒業し一級建築士として、古民家再生の第一人者である降旗設計事務所に勤務。主に修復する古民家の構造調査にかかわる。結婚後、ご主人のご家族が経営する食品加工会社「寿高原食品株式会社」の商品のパッケージやラベルのデザインを担当。2016年4月に上田市に同社の自社製品のアンテナショップとして「CAFÉ LITTLE MATILDA」を開店。デザイナーとカフェオーナー、一男一女のママとして忙しい日々を送る。

WEB:http://r.goope.jp/matilda


【今回のサマリー】

・生活の中のBGMは存在を意識させないナチュラル(自然)なものがいい。

・最近は、ラジオが好き。情報が耳からだけで受け取れることでリラックスできる。

・日常生活で大事にしたいのは安心感と、アクセントとしての変化をつけたい。

・変化させやすいためにも、インテリアはオーディオを含めコンパクトで動かしやすいことが大切


【生活の中のBGMについて】

ー日常的なBGMについては、どう考えてらっしゃいますか?

ヨーロッパに行くと、街のなかに日常的に音楽が流れてますよね。BGMということではなく、暮らしのなかにいろんな音楽が溶け込んでる。目に見えないけど聞こえてくるというか。音楽がながれている生活が日常ってことであれば、オーディオがある生活が普通なんですよね。でも、それは音の質のことを感じてるのではなくて音楽があることが求められてるので、オーディオが視覚的に目立っているのではなく、目立たない感じでインテリアに調和しているんですよね。(下は、ドイツケルンの大聖堂側の路上ピアノ) tatsu ーそれはありますねー。どっかから聞こえてくる楽器の練習の音とか、生なのかオーディオから出てるかは関係なく聞こえてきて、街の風景の一部になってますよね。

生活のなかに自然に存在しているという感じですよね。だから男の人が欲しがる大きくて、すごいオーディオセットとか視覚的に前にでてきてしまうから、そのための部屋になって日常生活を送る場所ではなくなっちゃう。だから部屋で日常生活を送る時間が多い女性にとっては、ざわつくモノで違和感しかないんですよね。ある日突然きたピザ窯みたいな(笑)

ーあー、わかります。ピザ窯って男性の好きなツールなんですよね。僕の周りにも欲しがってる人います。30代のアウトドア大好きな人と、50代の料理好きな人とか(笑)

ですよねぇ。男性ですよね(笑)普段日常的な生活には異物感とか違和感しかないんですよね。別に普通のオーブンとかでいいし。BBQコンロと同じポジションですよね。外に置きっぱなしでいい。でもBBQほど出番もないですし。

ー前述の欲しがってた方も、奥様を説得するために「ピザだけじゃなくて、ロティサリーチキンとかも作れるんだよ!」って言ったんだけど、ロティサリーチキンなんて年に何回つくるの?っていわれてあっさり却下されてました(笑)

ロティサリーチキンなんて、クリスマスしか思いつかないですよねぇ、年一回。最近は、大きな画面のテレビも同じ印象があります。男性が欲しがる大画面のテレビは、女性からすれば日常的には、キッチンのカウンターとかテーブルに乗る27インチぐらいで十分なのに、4Kだ!高解像度だ!ってことで壁を大きな真っ黒な物体が占領しちゃう。そうなると部屋がテレビの部屋になってしまうんですよね。

【普段使われているオーディオ機器について】

ーさきほどBGMのお話を伺いましたけれど、普段は、ご自宅のリビングやダイニングでは、どんな音楽を聞かれてますか?

最近、自分はラジオが好きです。画面見なくていいし、仕事とか家事とかしながら耳だけ傾けてればいい。天気予報とかニュースとか日常的に必要な情報を得るには十分ですし、聞いてて気になったものは、スマホですぐに検索して、あーこれなんだ、って解るし。 ーそうなんですよ、最近ラジオの聴取率あがってるんですよね。インターネットラジオが普及してきたこともあって、スマホ+Bluetoothスピーカーでラジオを聞いてるかたが増えてて、一時期おちていた広告出稿もふえてますね。水井さんと同じようにスマホ連携でWEBとかへのリーチもあったり。

ラジオの情報って、いちいち目で見なくてすむから疲れないんですよね。テレビみたいに視覚からくる情報に頼れないから、言葉である程度説明してくれますし。それだけで、どんなモノかは想像できるし、解らなければその場でスマホで検索して画像とかWEBとかみればいい。だから最近テレビが、あまり必要ないなーって感じています。

ーテレビは、どうしても見てもらう、読んでもらうツールなんですよね。だからアナウンサーも「ご覧の通り〇〇で」って説明になってしまう。なので見れないと情報が伝わらない。

そうなんですよ、その画面を見逃してしまうと結局WEBで検索しないといけないんですよね。それに見てなくても、目線上にチラチラ動くのも気になってしまう。ラジオはチューニングがあって、音質は聞きやすければ良いので、むしろ見た目が美しくて、置いてて気にならないモノが好きですね。それを見た時に、ずっと見ていたいなー、と思える魅力があるモノ。

ー見ていたいなーって言うのは、わかります! 最近インスタとかで若い人が、ミッドセンチュリー的なリビングのインテリアのなかに、アナログレコードのジャケットやレコードプレイヤーを置いていて、別に音を出さなくても見ていて楽しいし、なんか癒やされる、ってコメントを見たのですが、それも同じ感じですよね。

同じだと思います。見て目に入るモノは慣れやすく美しいモノがいい。だけど慣れないモノ、日常生活にしっくりこないものって何年たっても見慣れないんですよね、安心できない。私は、生活って安心感が大事だと思っています。生活の場に、はまらない違和感でざわつく感じのモノがあると、日々の暮らしの安心感が薄れると感じるんですよね。

【日常生活の安心と変化と色について】

ー日常生活にとって安心感が大切っていいキーワードですね。違和感を感じないざわつかないのが大切。

もちろん特別な日、スペシャリティな日は、あって良いと思います。なにかのお祝いとか、お客様を招いてパーティするとか。けれど、それは日常の安心が保てていることがあってなんですよね。そして安心感を得られるデザインって、日常にフィットする形、穏やかさとか丸みとか色とか、コンパクトさとか、手軽に運べる感じとか。(下:水井さんがデザインされたテキスタイル・詳しくはこちら ー色はやっぱり大事なんですね。

そうですね、全部同じ色にすると緊張感が増してしまうので、なるべく差し色を混ぜて変化をくわえることが、安心感ができるんですよね。私自身、色んな色が好きなんですけど、デザインするときには、色のトーン(明度や彩度)については揃えるように考えます。

ーなるほど。一つの色だけに揃えることの圧迫感ありますね。

全部白とか黒とかにすると、パッと見てかっこいいんだけれど、私は、ずっとはそこには居られないですね。やっぱりスタイリッシュな家は完成した時は、かっこいいだけれど、その後もずっと、そのスタイリッシュさを頑張って保たないといけない。でも日常で使う家って、使っているうちに傷ついたり汚れたりして、それが暮らしの味や記憶になるわけですから、私は時間とともに傷ついたり汚れたりしてもいい、という安心感を大切にしたい思います。

ー水井さんのお話を聞いて、日常だからこそ安心感がすべて優先するということがよくわかりました。

やっぱり生活するってことは、安心安全であることが大事だと思います。それと同時に女性は生活に変化を持たせたいんです。傷がつくとか汚れるとかも変化の一つですし、模様替えとかもそうです。やはり女性は、毎月毎月変化していくという身体的な特徴を持って生きてることもあると感じています。ちょっとした家具の配置変更でも気分転換はできて、それが生活のアクセントになります。だからインテリアも動かしやすい、変更しやすいことは大切なので、生活の中にあるモノは、小さくて動かしやすいモノが良くて、大きなモノ、重くて動かしにくいモノって置きたくないんです(笑)

ーなるほど安心安全と変化を楽しむってことですね。

私は、タペストリーをパーテーションにつかったりするのが好きなんですけど、壁紙そのものをいじらなくても、タベストリーをかけるだけで変わりますよね。日々のなかで小さな変化を楽しむことが女性にとって楽しいんだと思ってます。 (下:お店の化粧室の間仕切りに使われているタペストリー) ータベストリーいいですよね。カーテンもその範疇になりますね。和室だと、ふすまとかの張替えとかでもがらっと雰囲気かわる。

そうですね。やっぱり女性の気持ちとして、その時の暮らし方や生活にあわせて、インテリアは積極的に変化させたいんです。日常の生活のなかで家族構成が変わったり、色々と変化していかないといけない部分もでてきますから、その変化を受け入れて楽しむという気持ちを大事にする。なにか辛いときでも辛いだけではなく、それを解決するための変化を考えていくことで楽しくなれますし。

ー確かに、いろんなターニングポイントがありますね。

男性はどちらかといえば変化を求めない方が多いじゃないかとおもうんです。変更はわずかにして、なるべくルーティーン化したい(笑)

ー耳が痛いなー(笑) でも、親からもそうやって育てられた部分も結構あります。ちゃんとしなさい、しっかりしなさい、って安定しなさいって意味ですし。そういう意味で、大きくて重たいオーディオは、動かせない安定の塊で男性の象徴ともいえますね。

そうなんです。だからインテリア・オーディオも同じように、大きくて存在感を主張する、それが目的になってしまうモノは日常空間に置いてしまうと、ちょっと変化したくてインテリアの模様替えするときに邪魔になってしまう(笑) できれば置き場所の自由度があってデザインがかわいくて、そしてそのデザインに似合った音が流れるのが私は好きですね。今回のこの真空管アンプとか、音出してなくてもぼんやり灯りが灯ってるだけで部屋に置いて眺めてたくなります。こういうのが私が求めてる感じです。 ーなるほど。ありがとうございます! ーそういえば、今のお店は、3月末で閉店されると伺ったのですが・・・

そうなんです。詳しくは、フェイスブックページをご覧いただければと思いますが、お店のある土地の再開発がきまって立ち退かなければならなくなりました。

ー移転されるんでしょうか?

まだ具体的になにも決まってないのですが、いろいろと構想はあるので、はっきりしたらInstagramフェイスブックページでご案内したいと思ってます. (下:閉店のお知らせ) ー了解です。楽しみにまってます!今日は、ありがとうございました。日常を大事にするときに安心感、そして変化を楽しめるインテリアの要素って意味合いが、すごくわかりやすかったです。

こちらこそありがとうございました!

取材場所協力:石森良三商店 

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