SWユーザー訪問:第4回/島村楽器 島さん

【SWユーザー訪問】第4回は、今までこのコラムでご紹介してきた、SOUND WARRIOR製品をお使い頂いているお客様とは、ちょっと目線を変えて、同じお客様でも共同開発(ODM)をさせていただいた島村楽器株式会社 商品部 商品課の島 雄一さんのご紹介です。

>まず自己紹介をお願いします。

島村楽器株式会社 商品部 商品課でデジタル楽器のバイヤーを担当しております。主に商品の仕入れから販売促進、自社製品の開発などを手掛けていますが、その他にもお客様が商品を体験しやすい売り場の環境整備や、スタッフの商品知識向上の取り組みも行っています。SOUND WARRIORさんと共同開発させていただいたヘッドホンも私が担当しております。弊社では、音楽教室事業にも力をいれていて、楽器の練習や演奏を楽しむお客様のニーズにあったオリジナル製品を提供していきたいという思いがあり、楽器練習用のヘッドホンの共同開発をお願いしました。

>楽器店として、島村楽器さんは弊社の本社のある長野県にもいくつか店舗がありますよね?

はい、現在は、長野県内は、長野市、松本市、佐久市に店舗を展開しています(2023年4月時点)

>上田からの最寄りだと佐久になるんですが、自分も何度か伺ったことがあります。モールの中にある楽器店って、ついでに寄れて便利ですよね。売り場が開けているので、ぱっと入りやすいですし。今日、インタビューさせていただいているこのビビット南船橋店もモールの中にありますけど、広い店舗ですね。

ここは、弊社のモール内の店舗でも比較的広いスペースをもった店舗になります。ちょっとしたライブイベントや演奏会などができるスペースとして使える場所もあります。

>今インタビューさせていただいてるこの場所ですね。グランドピアノとかも置かれていていい雰囲気ですよね。

ありがとうございます。ちなみに弊社は現在、全国で180店舗を展開していますが、ほとんどの店舗で音楽教室を併設しているほか、練習スタジオや防音室の展示があることが多いです。楽器の修理技術者が常駐している店舗もあります。

>なるほど。防音室の展示もふくめて、基本的に島村楽器さんのポリシーとして音楽教室とかの楽器を演奏するコトについて、大事にされている印象があります。

おっしゃるとおりです。弊社は、そもそもシマムラ文具店という文房具店が本業だったのですが、1962年に当時の社長が音楽好きだったこともあり、ヤマハさんからのお声がけに応じる形で音楽教室事業を始めました。当時文房具店で音楽教室事業を始めたのは、おそらく弊社だけだったのか、新聞で取り上げられるほど話題になりました。その後、1969年に教室事業と並行してピアノやエレクトーンを販売する楽器販売事業もスタートしました。

会社設立当時の島村楽器本社(島村楽器WEBサイトより
>それは、まったく知りませんでした。普通の楽器店とは、逆のストーリーなんですね!

そうですね、音楽教室の生徒さんの親御さんたちから「家で練習するために楽器を販売してほしい」との声があり楽器の販売をはじめました。ほかの楽器店の多くが、楽器販売からスタートしてその後音楽教室を始められたところが多いので、プロセスとしては逆になりますね。

>音楽教室というソフトサービスが先行して、あとから顧客サービスとして楽器を販売するハードサービスを始めるのって、今風の事業展開で、当時の社長は時代を先取りされてたんですね。創業のストーリーを伺って、今回の楽器練習用のヘッドホンを自社開発されるという経緯がわかりました。ちなみに文房具業はいまも続いてらっしゃるんですか?

続いています。創業の地であり現在も本社があるビルの隣に、小さいですが文房具店を営んでおります。

>いろいろと、島村楽器さんの歴史やポリシーを伺ってきましたが、今度は、島さんのお話をお聞かせいただければとおもいます。島村楽器に就職されたのは、どういう経緯でしたか?

楽器店スタッフあるあるかと思いますが(笑)、私は弊社の千葉パルコ店(現千葉店)でアルバイト店員として働いていたのが、そもそもの始まりでした。当時は個人でDJとして活動していて、アルバイトの傍らクラブなどにも出演していました。

>まさに楽器店あるあるですねー。ヤマハの方とかでも、店舗のアルバイトからヤマハに就職されたかたとかもいらっしゃいますし。

そうですね。私も販売員としてのアルバイトから契約社員、そして正社員になりました。販売員時代にデジタル機器の商品担当をしておりまして、その経験をいかしデジタル機器のバイヤーとして今日に至ります。そのような中で、DJや音楽制作など多くのデジタル機器で必要となるヘッドホンは、私の中でこだわりの強い商品の1つとなっています。

>なるほど。ここでヘッドホンに繋がりました!

はい。SOUND WARRIORのSW-HP10sについて、いろいろと評判は聞いていて、プロユースでも大手メーカーの製品と互角の性能という評価をされる方も多かったですし、自分自身もHP10sの音を聞いてみたら装着感も音質も十分に良いと感じていたので、いつか自社ブランドでヘッドホンを作るなら、この感じでできたらと思ってました。

>ありがとうございます。まずピアノ練習用のヘッドホン【EMUL SSW-HP200】を開発するというきっかけは何だったんでしょうか?

ピアノ練習用のヘッドホンは、それまで比較的安価な3000円〜7000円ぐらいの商品が主流だったんですが、電子ピアノの性能が上がり、楽器自体の音質が非常によくなってきたので、もっと高音質のヘッドホンのニーズが出てきました。また楽器自体の値段も3万円から70万円ぐらいまで幅広くなり、従来の低価格なヘッドホンにはない、クオリティの高いものを求められるようになりました。

EMUL SSW-HP200 MK2 電子ピアノ用ヘッドホン
>わかります。デジタル音源の進化もあって、オーディオ製品と同じように、ハイレゾな音色になりましたよね。自社開発するときに、ここは大事にしたいと思われたポイントはなんでしたか?

大きくわけて2つあります。ひとつは装着感です。楽器の練習は没頭すると長い時間になることも多いですし、長時間かけて耳が痛くならないことが大切です。またイヤーパッドの耳に当たる部分の素材を通常のビニールレザーからベロア素材に変更しました。これでによって肌へのあたりが優しくなったのと、汗をかいたときのベタつき感が軽減されたと思います。2つ目は、音が外に貫けるセミオープン仕様にした点です。電子ピアノの上位モデルは音質が良く、生ピアノ本来の空間全体で音が広がる臨場感がとてもよく再現されています。この音をヘッドホンでも感じられるようにするためセミオープン仕様にするのは必須と考えておりました。
楽器の練習をしているときに、周りの音がある程度聞こえたほうがいいんですよね。ご家庭のリビングなどで練習されることが多いのですが、このときに、電話の音や、ご家族が呼ぶ声、たとえば「夕飯できたわよー」(笑) なんて声が適度に聞こえたほうがリラックスできるんですよね。

>すごくわかります!。自分も楽器の練習を密閉型のヘッドホンしていたら、いきなり背後から家族に肩を叩かれて、びっくりしたこと何度もありました(笑) いくら呼んでも返事しないから、こうするしかなかったのよ!って;;;

そうなんです。外の音が聞こえるといっても、オープンタイプだと外の音が聞こえすぎて練習に集中できなくなってしまうのと、練習している楽器の音が外に漏れてしまう。ですので、外の音は聞こえるが、ヘッドホンの音がもれないセミオープンというレベルにこだわりました。

>弊社の開発スタッフも同じように話してました。ある意味、島さんからのリクエストに応えるために、従来のイヤーパッドと変わらない装着感と音質を維持しながら、セミオープンを実現するための工夫が必要だったと。

おかげさまで、非常に納得のいくヘッドホンが完成しました。ご購入されるお客様は、ほとんどの方が店頭でヘッドホンを試聴されたうえで、ご購入いただいています。

>そして、次に電子ドラム練習用のヘッドホンの開発ということになったんですね?

そうです。電子ドラム練習用のヘッドホンは、ニーズが明確にあったのでピアノの次にやると決めていました。ただ、ピアノ練習用にくらべると、いろいろと課題もあって、開発に時間がかかりました。

EMUL SSW-DHP200 電子ドラム用ヘッドホン
>課題とは、どんな部分でしょうか?

まず音色的には、ピアノと比べてタムの低域の音抜けのよさと、シンバルの高域のアタック感が必要なので、音作りとしては、かなりシビアになったと思います。そして、もう1つは、ケーブルの長さとクリップです。ピアノ練習用は、2.5mのケーブルが標準でしたが、ドラム練習用は更に50cm伸ばして3mとしました。2.5mだとヘッドホンの取り回しの自由度が低く、セットアップによっては使いにくかったからです。あとは、クリップを付属させて、ケーブルの取り回しを固定できるようにしました。またピアノ練習用で好評だったベロアのイヤーパッドは、当然こちらでも採用しました。

>あのベロアのイヤーパッドはいいですよね。夏場とかエアコンがあっても、ドラム練習してたら汗かくとおもうので、そのときにイヤーパッドがベタベタしなくて良いと思いました。

そうですね、あと、SOUND WARRIORの一番の良いところとして、ヘッドホン本体に金属部分がないことです。これは弊社のWEBサイトでも強調しているところですが、金属部分がなく、柔らかめのナイロン樹脂ボディだから、うっかりして楽器とヘッドホンが擦れたり、当たったりしたときに、楽器を傷つけにくいんです。

それと練習用とうたっていますが、根本としては演奏を長く楽しんでほしいという願いがあります。これは長時間演奏できる、ということだけでなく、長期間ご愛用いただけるということも含みます。ケーブルとかイヤーパッドは、やはり消耗品だと思うので簡単に交換できたほうが長くお使いいただけます。そういう部分でも、SOUND WARRIORさんの製品は私が思い描いていた仕様であると思っています。

>なるほど。そういう評価って楽器とくみあわせて使って、初めて分かる部分ですね。いろいろとお話を聞いてきて、ほんとうに島さんのヘッドホンへのこだわりが、よくわかりました!
>さて、ピアノ練習用、ドラム練習用という形でリリースされてきたので、お客様からは、次はギター用か??って期待があるかとおもいますけど、そこはどう考えてらっしゃいますか?もちろんお答え頂ける範囲でかまいません。

現時点で具体的にお話できることはないんですが、ギター用として作るなら、というアイディアは持ってます。最近のギターのお客様は、小さなテーブルトップのアンプを購入されることが多いので、それを想定したような製品になるのかな、とか。ちなみにドラム用のヘッドホンは、ベーシストにも推奨しています。音質とかの特性はピアノ用よりもドラム用のほうが、ベースに向いていますので。

>わかります。ベードラとベースの求めるトランジェントとか同じですものね。ギター練習用のヘッドホンがいつか登場するのを、おおいに期待しております!
本日は、お忙しい中、色々と裏話的なお話をありがとうございました。

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